鎌倉幕府を開いた源頼朝の幕下、臣下第一に位置する工藤祐経(すけつね)は、巻狩の総奉行も拝命した。それを祝うおおぜいの大名たちで溢れる工藤館に現われたのは、ある人物によく似た二人の若者。
工藤祐経は源頼朝の信任厚く、数多の大名の筆頭の地位である一臈職を賜り、富士の裾野で行なわれる巻狩の総奉行まで仰せつかった。その祝いの宴に大名たちがつめかけ、大磯の廓からも虎(とら)と少将(しょうしょう)ら、全盛の遊女たちが花を添えている。梶原景時(かじわらかげとき)景高(かげたか)親子を始め皆々から勧められて、工藤は高座(特別席)に着座する。
その祝いの場に、朝比奈三郎の取りなしで、曽我十郎祐成(すけなり)と五郎時致(ときむね)の兄弟が工藤に会いにやってくる。二人は工藤を父の河津三郎を討った仇敵として、十八年間付け狙ってきて、ようやく工藤に対面することができたのだ。工藤は兄弟を見て、誰かに似ていると言う。兄弟はしかたなく、河津三郎の忘れ形見だと告げる。その場で工藤を討とうとはやる弟。工藤は兄弟に、紛失している宝剣・友切丸(ともきりまる)が見つかるまでは、仇討はできないと申し渡す。五郎が切歯扼腕(せっしやくわん)するところへ、曽我の忠臣鬼王新左衛門が友切丸が手に入ったと持参する。
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