天下をもくろむ松永大膳(まつながだいぜん)によって金閣寺に囚われた将軍の母と絵師雪村の娘雪姫。知略をもって救出に向かう此下東吉(このしたとうきち)。絶体絶命の危機に家の故事に倣って爪先で鼠を描いた雪姫に祖父雪舟(せっしゅう)同様の奇跡がおこる。京の名勝金閣寺を舞台に繰り広げられる桜花爛満の歌舞伎絵巻。
豪華絢爛たる金閣寺。楼上に旧主足利将軍の母慶寿院(けいじゅいん)を幽閉した松永大膳は、仕官を願い出た此下東吉と碁を打ち勝負に負ける。怒った大膳はさらに東吉の智恵を試そうと井戸に碁笥(ごけ)を投げ込み、手をぬらさずに碁笥を取り出せと難題を吹きかける。東吉は樋(とい)に瀧から水を引き入れて、手も濡らさず碁筒を取り上げる。その奇智に感心して大膳は東吉を召し抱える。
絵師狩野雪村(かのうせっそん)の娘雪姫と婿直信(なおのぶ)も金閣寺に囚えられている。かねて雪姫に横恋慕している大膳は、金閣の天井に龍の絵を描くか、自分になびくかと姫に迫る。しかし大膳の抜き放った宝剣から、大膳こそ父の敵と悟った姫は斬りかかるのだが、捕えられ縄で桜の木に繋がれてしまう。やがて夫直信が処刑されることに。吹雪のごとく舞い散る桜花の下で身動きできない雪姫は、祖父雪舟の奇跡の再現を念じ、足で集めた花弁(はなびら)を使い爪先で鼠を描いた。するとその鼠が動き出し姫の縄を喰い千切り、姫は夫を追っていく。
東吉は、実は慶寿院救出のため信長が派遣した武将で、後に出世して筑前守久吉(ひさよし)となった人物。大膳が所持している倶利伽羅丸(くりからまる)はもともと狩野家の宝剣であったが大膳に奪い取られていた。朝日に映すと不動の尊体、夕日に向かえば龍の形が現れるという奇瑞を見せるという宝剣を、東吉は大膳から奪い返して雪姫に与え、直信の元へと向かわせる。さらに高楼の最上階にのぼり慶寿院を救出する。久吉は、怒りくるう大膳に戦場での再会を約束する。
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