梶原平三景時(かじわらへいぞうかげとき)は、智勇そなえた平家方の武将。
彼の前に、家伝来の刀を売りにきたのは、源氏方の素性を隠した老父とその娘。
曇りなき武士(もののふ)の心が稀代の名刀に出会ったとき、思いもかけない神業を生む。
梶原平三の心と、真摯な父娘の想いが、名刀を介して響き合う、晴れやかな幕切れ!
紅白の梅が満開の早春の鎌倉八幡宮に、源頼朝の挙兵を石橋山で破った平家方の武将・大庭三郎景親(おおばさぶろうかげちか)と俣野五郎(またののごろう)兄弟が参詣に来ている。そこへ同僚の梶原平三景時(かじわらへいぞうかげとき)が、梅を観にやってくる。梶原の誘いで一献汲み交わすところに、青貝師(螺鈿細工の職人)六郎太夫(ろくろだゆう)と娘梢(こずえ)が訪ねて来て、大庭に家宝の刀を買ってほしいと頼む。大庭は梶原に刀の目利き(鑑定)を頼む。梶原は一目見て「天晴れ稀代の名剣」と賞賛する。
大庭は大喜びで買おうとするが、俣野が横から口をはさみ、二人重ねて一刀に斬る「二つ胴(ふたつどう)」を試すべきだという。しかし、試し斬りにするにも、死罪と決まった囚人は剣菱呑助一人しかいない。すると六郎太夫がわざと嘘を言って娘を家に使いにやってから、自ら犠牲になるから二ツ胴の試し斬りをしてくれと言う。それを聴いて梶原が試し斬りを買って出る。戻ってきた梢が驚き嘆く前で、梶原は呑助と六郎太夫を重ねて斬るが、わざと失敗したように見せて、上になった呑助と、下になった六郎太夫の縛めの縄まで斬って止める。
二つ胴が斬れなかったと見た大庭兄弟は、嘲けり立ち去る。梶原は父娘が刀を売るのは源頼朝再挙の軍資金調達のためだと見抜き、二人にわざと試し斬りに失敗したこと、自分の本心は源氏方にあることを明かす。そして刀が名剣である証拠に、神前の手水鉢を一刀両断にして見せる。喜ぶ父娘に刀を買い上げる約束をして、連れだって屋敷へ帰って行くのだった。
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