滝夜叉姫が暗がりから凄艶な姿で現われ、勇者光圀を誘惑して味方に取り込もうとする。
将門のかつてのアジトで繰り広げられる反体制の王女の計略やいかに。
妖しい美しさを放つ舞踊劇。
ここは相馬の古御所。平将門は天下を狙って滅ぼされ、かつてはきらびやかだった将門の御所も荒れ果てている。どこからともなく麗しい傾城(位の高い遊女)が現れる。蝋燭の光のゆらめきに照らされて、煙と共にセリ上がってくる姿が妖しく美しい。彼女は手紙を取り出し、恋の手管に長けている遊女でも、本当の恋は苦しいものだと、切なさを訴え、古御所に向かう。
古御所には勇者大宅太郎光圀がまどろんでいた。ここで起きるという怪異の噂を聞きつけて乗り込んでいたのだ。遊女に呼びかけられて目を覚まし、こんなところに居るのは妖怪だろうと斬りかかる。女はそれを押しとどめ、自分は京島原の傾城如月だと名乗る。少しも警戒を解かない光圀に、実は以前に光圀を見染め、その恋心からここまで来たのだと目をうるませて迫る。
光圀はわざと打ち解けたふりをしながら、相馬御所がきらびやかだった頃に話を転じ、将門の乱から討ち死するまでの物語へと進めていった。光圀が、将門が敵方の放った矢先にこめかみを射貫かれ、馬から落ちて落命する最期の様を語るのを聴くと、如月はこらえかねて忍び泣く。
なぜ泣くのかという光圀の問いをはぐらかし、如月は廓の客と遊女のつや話を持ち掛け、懐紙を使って踊る。光圀も付き合い、客になった心で密会の様子などに興ずるうちに、如月が錦の御旗を取り落とす。光圀が拾い、如月がすぐ取り返したのだが…。ここで筋から一旦離れて、二人で踊る「踊り地」と呼ばれる場面になる。ここが歌舞伎舞踊の面白いところ。
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