女殺油地獄 オンナコロシアブラノジゴク

遊びの金につまった無軌道な若者
惨殺したのは町内の美しい人妻だった

油屋の放蕩息子与兵衛は、借りた金の返済に困って自暴自棄。
油まみれの悽惨な殺しへとつき進む。
江戸時代にもこんな事件があったのだ。

あらすじ

執筆者 / 小宮暁子

行楽半分の野崎参り

舟で行く人、のんびり土手を歩く人で賑わう野崎参りの徳庵提。油商河内屋の道楽息子与兵衛は野崎参りにさそって断わられた馴染みの遊女小菊を巡って、田舎客と喧嘩騒ぎをおこす。来合わせた伯父で侍の森右衛門に手打ちになりかかる。危うく難をのがれた与兵衛は、通りかかった同じ町内の同業豊島屋の女房お吉に、喧嘩で汚れた着物を濯いでもらう。

【左】[左から]花車お杉(中村歌江)、芸者小菊(尾上松也)、河内屋与兵衛(片岡愛之助) 平成24年5月新橋演舞場
【中央】[左から]小姓頭小栗八弥(中村児太郎)、与兵衛叔父山本森右衛門(松本錦吾)、河内屋与兵衛(片岡愛之助) 平成24年5月新橋演舞場
【右】[左から]河内屋与兵衛(片岡仁左衛門)、七左衛門女房お吉(片岡孝太郎)、娘お光(片岡千之助) 平成21年6月歌舞伎座
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番頭あがりの義父

与兵衛は義父徳兵衛が番頭あがりで遠慮がちなのに付けこんで放蕩三昧。妹おかちに仮病をつかわせ、自分が家督相続できるよう策をめぐらすが失敗。義父ばかりか実母にまで手を上げるので、とうとう母に家を追い出される。

【左】[左から]河内屋与兵衛(片岡愛之助)、妹おかち(中村米吉)、父河内屋徳兵衛(中村歌六) 平成24年5月新橋演舞場
【右】[左から]母おさわ(片岡秀太郎)、河内屋与兵衛(片岡仁左衛門)、父河内屋徳兵衛(中村歌六)、妹おかち(中村梅枝) 平成21年6月歌舞伎座
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油まみれの惨劇

節季がきた。親の印判を不正に利用して作った借金銀二百匁(もんめ)の返済に困った与兵衛は日頃自分に好意的な豊島屋の女房お吉に借金を頼みに行く。そこに、義父や母が与兵衛が来たら渡してほしいと銅銭八百文を預けに来ているのを目撃。親には迷惑をかけまいと思う与兵衛だが、借金は親が持ってきて預けた金額ではどうにもならないほどの金高であった。自暴自棄になりながら与兵衛は「不義になって貸してくだされ」とお吉に懇願する。心を鬼にして金を貸さないお吉に、ついに刃をむける。油まみれで逃げまわるお吉はついに息たえる。

【左】河内屋与兵衛(市川染五郎) 平成23年2月ル テアトル銀座
【中央】[左から]河内屋与兵衛(片岡仁左衛門)、七左衛門女房お吉(片岡孝太郎) 平成21年6月歌舞伎座
【右】[上から]河内屋与兵衛(片岡仁左衛門)、七左衛門女房お吉(片岡孝太郎) 平成21年6月歌舞伎座
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ねずみのお手柄

与兵衛は奪った金で新町や新地を遊び廻り、伯父森右衛門の探索の手をのがれる。しかもお吉の三十五日の逮夜になにくわぬ顔をして豊島屋にあらわれる。その時、ねずみが天井であばれ、血のついた紙片が落ちてくる。そこに書かれた文字は与兵衛の筆跡に間違いなかった。与兵衛はついに捕えられる。

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