油屋の放蕩息子与兵衛は、借りた金の返済に困って自暴自棄。
油まみれの悽惨な殺しへとつき進む。
江戸時代にもこんな事件があったのだ。
舟で行く人、のんびり土手を歩く人で賑わう野崎参りの徳庵提。油商河内屋の道楽息子与兵衛は野崎参りにさそって断わられた馴染みの遊女小菊を巡って、田舎客と喧嘩騒ぎをおこす。来合わせた伯父で侍の森右衛門に手打ちになりかかる。危うく難をのがれた与兵衛は、通りかかった同じ町内の同業豊島屋の女房お吉に、喧嘩で汚れた着物を濯いでもらう。
与兵衛は義父徳兵衛が番頭あがりで遠慮がちなのに付けこんで放蕩三昧。妹おかちに仮病をつかわせ、自分が家督相続できるよう策をめぐらすが失敗。義父ばかりか実母にまで手を上げるので、とうとう母に家を追い出される。
節季がきた。親の印判を不正に利用して作った借金銀二百匁(もんめ)の返済に困った与兵衛は日頃自分に好意的な豊島屋の女房お吉に借金を頼みに行く。そこに、義父や母が与兵衛が来たら渡してほしいと銅銭八百文を預けに来ているのを目撃。親には迷惑をかけまいと思う与兵衛だが、借金は親が持ってきて預けた金額ではどうにもならないほどの金高であった。自暴自棄になりながら与兵衛は「不義になって貸してくだされ」とお吉に懇願する。心を鬼にして金を貸さないお吉に、ついに刃をむける。油まみれで逃げまわるお吉はついに息たえる。
松竹株式会社、国立国会図書館から許可を受けた写真を掲載しています。
当サイトに掲載されているすべての記事・写真の無断転載を禁じます。
©松竹株式会社 / ©国立国会図書館 / © 歌舞伎 on the web. All Rights Reserved.