親の仇を討つため、貧乏暮らしでも日々鍛錬する曽我五郎時致(そがのごろうときむね)。そんな五郎もお正月は酒を飲み、雑煮を食べるひとときがある。しかし、うたた寝して夢に出てきたのは、助けを求める兄の十郎!若々しく超人的な豪快さとしゃれっ気を見せる、動く絵画のような様式美。歌舞伎十八番の代表作。
ここは相模国(さがみのくに)古井(ふるい)。曽我五郎時致の故郷である。舞台正面の家の障子が上がると、五郎は炬燵の櫓(やぐら)に腰をかけ、親の仇を討つために、大きな矢の根(やじり)を砥石で研いでいる。「どんなに敵の工藤祐経が威勢を振るっていても負けないつもりだが、貧乏だ」とこぼしつつ、自分のもとへ福をもたらしてくれない七福神の悪口を言っている。
と、大薩摩主膳太夫(おおざつましゅぜんたゆう)が新年のあいさつにやってくる。大人気の五郎が主演した芝居のおかげで、傍で演奏する大薩摩の太夫も繁盛というわけで、お年玉として縁起の良い宝船の絵を置いて帰る。
主膳太夫が帰ったあと、五郎は宝船の絵を敷き、砥石を枕に、「仇を討つ良い夢を見よう」ととろとろと居眠りをする。しばらくすると夢に兄の十郎の生霊(いきりょう)が現れ、「祐経に捕らえられた、起きて助けに来てくれ」と呼びかける。
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