日本のヒーローものの元祖ともいうべき作品。ストーリーは単純明快、超人的な活躍を見せる主人公に、江戸の庶民も熱狂しただろう。舞台に溢れるおおらかさ、見た目にも華やかな道具や扮装、バラエティに富んだ役々などを理屈抜きに楽しもう。
鎌倉は鶴岡八幡宮の社前で、清原武衡と加茂次郎義綱がそれぞれ奉納するものをめぐって対立している。すでに天下人になった気でいる武衡は、自分の家来になるよう義綱を脅し、義綱の許嫁・桂の前にも自分になびくよう迫る。二人が拒絶すると、怒った武衡が全員の首を刎ねるよう命じ、義綱たちは絶体絶命の大ピンチに。
その時、どこからともなく「しばらく」の大音声が響き、罪のない人たちを颯爽と救うヒーロー・鎌倉権五郎が花道から登場し、先ず花道にどっかと座り大音声で「つらね」と呼ばれる先祖由来の文句をちりばめた自己紹介を豪快に述べる。そのいでたちは戦隊モノ並みの大迫力の重装備。武衡に味方する人たちは、突如現れた邪魔者を追い払おうとするが、みな軽くあしらわれてしまう。権五郎は悠然と舞台中央まで進み、豪快な「元禄見得」を見せる。
権五郎は武衡に向かい、無礼な態度の数々を非難する。さらに奉納する宝刀は偽物で謀反の願いをかけていることを暴き、義綱が紛失した重宝も武衡が持っているはずだと追及する。ここで武衡の一味と思われた女性・照葉が、武衡のもとにあった重宝を自分がこっそり持ち出したと言い出す。照葉は実は権五郎のいとこで、悪人方の一味と見せかけて重宝を探索していたスパイだったのだ。重宝が義綱に渡され、義綱一行は権五郎に後を託して帰路につく。
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