東海道四谷怪談 トウカイドウヨツヤカイダン

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 東海道四谷怪談
作者 四代目鶴屋南北
初演 1825(文政8)年7月 江戸・中村座
概要 現在も四谷にある「お岩稲荷」にまつわる噂話などをもとに創作された、怪談の定番ともいえる作品。独創的な物語を多数発表し、大南北(おおなんぼく)とも呼ばれた四代目鶴屋南北の傑作のひとつ。怪談としてはもちろん、江戸時代の庶民生活の実態を綿密に描き出す生世話物(きぜわもの)の代表作にもあげられ、当時の社会の下層での暮らしを余儀なくされた人々が生き抜いていくさまをリアルに描いている点も興味深い。

もともと『仮名手本忠臣蔵』の外伝として書かれ、初演時には『忠臣蔵』と『四谷怪談』を交互に演じて2日がかりで大詰まで上演し、結末として『忠臣蔵』討入を上演するという、他にあまり例を見ない形式だった。つまり、この物語は『忠臣蔵』の裏で進んでいたもうひとつの仇討事件で、討入がすべての終着点になるのである。再演時からは単独で上演されるようになったが、役の設定などに関連がそのまま残っている。

現在では通し上演の場合でも、「三角屋敷」「夢の場」は省略されることが多い。「三角屋敷」は夫婦として暮らしている直助権兵衛とお袖の意外な因縁が明らかになる悲劇。「夢の場」は伊右衛門が夢の中で美しい娘に出会い色模様になるが、娘がお岩の姿になり、さんざんな目にあわされてしまう場面である。


●トップページ・タイトル写真
[左から]民谷伊右衛門(市川海老蔵)、民谷女房お岩(中村勘太郎) 平成22年8月新橋演舞場

●ページ公開日 平成27年2月20日
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