三人吉三巴白浪 サンニンキチサトモエノシラナミ

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 三人吉三巴白浪
作者 河竹黙阿弥
初演 1860(安政7)年1月 江戸・市村座
概要 二代目河竹新七(後の黙阿弥)が四代目市川小團次と組んで発表した作品のひとつで、世話物の名作。初演時には『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』という外題で、七幕十三場からなる長編だった。その時はあまり評判にならなかったが、黙阿弥自身は会心の作と評価していたという。初演から約30年後、話を一部整理して外題も『三人吉三巴白浪』と改めて再演した時には大評判となり、以後は人気狂言として定着した。

同じ「吉三」の名をもつ三人の盗賊が、ふとした出会いから義兄弟となり、各々の事情や因縁に苦しみながら、最後は目的を果たして刺し違えて死んでいく。三人をめぐる因果が精巧に描かれ、幕末らしい退廃的な雰囲気もあいまって、随所に凄惨な美が感じられる。お嬢吉三の名せりふなど、せりふの美しさも存分に楽しめる。

主人公のひとりお嬢吉三は、女装している男性。このように性別をもあいまいにして仮の姿で悪事を働く役は『白浪五人男』の弁天小僧、『忍ぶの惣太(しのぶのそうた)』の傾城花子などにも見られ、黙阿弥が得意とした趣向のひとつである。


●トップページ・タイトル写真
[左から]お嬢吉三(坂東玉三郎)、和尚吉三(十二代目市川團十郎)、お坊吉三(片岡仁左衛門) 平成16年2月歌舞伎座

●ページ公開日 平成27年1月15日
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