寿曽我対面 コトブキソガノタイメン

登場人物

人物関係図

人物相関図

主な登場人物

工藤左衛門祐経【くどうさえもんすけつね】
将軍源頼朝の信頼厚い大名で、大名の筆頭である一臈職(いちろうしょく)を賜り、富士山の裾野で行われる大規模な巻狩(まきがり)の総奉行も引き受けることになった。この場の18年前、同じ一族である伊東祐親(いとうすけちか)との領地争いが原因で、祐親の息子で曽我兄弟の実父である河津三郎祐泰(かわづのさぶろうすけやす)を討った。本来は敵役だが、一座のトップである座頭(ざがしら)が演じることから、役柄は立役となっている。
曽我十郎祐成【そがのじゅうろうすけなり】
曽我兄弟の兄で、幼名一萬(いちまん)。物腰柔らかく落ち着いた「和事(わごと)」の役柄。父亡き後に母が再婚したため、弟とともに曽我の姓を名のる。若年ではあるが工藤を前にしてもいささかも臆せず、堂々と河津三郎の忘れ形見であることを伝え、この場はあくまで挨拶であるという態度を貫いて工藤から杯を受ける。
曽我五郎時致【そがのごろうときむね】
曽我兄弟の弟。幼名箱王(はこおう)。血気盛んな若者で、典型的な「荒事(あらごと)」の役とされる。兄と対照的に、挨拶の場であっても父の敵と狙う工藤を目の前にして、はやる気持ちが抑えきれず、下された杯を載せた三方(さんぼう)を叩きつぶしてしまう。
小林朝比奈【こばやしのあさひな】
(朝比奈三郎とされることもある)
関東の豪族の一人で、曽我兄弟を工藤と対面させる手はずを整えるが、基本的には工藤・兄弟どちらにも寄らず中立の立場。武骨で大きな身体ながら、ちょっとおかしみを出す「道化役(どうけやく)」の役柄で、せりふ回しが独特。剛力で知られた朝比奈三郎義秀をモデルとしている。義秀には、和田の合戦で幕府の惣門を打ち破ったという伝説がある。
小林舞鶴【こばやしのまいづる】
朝比奈の妹。演出によっては朝比奈にかわって「対面」に登場する。並みならぬ強さを持ちながら女性らしさもそなえる「女武道(おんなぶどう)」の役柄。ちなみに朝比奈三郎の大力の逸話を女性版にした『和田合戦女舞鶴(わだかっせんおんなまいづる)』にも、夫のために門を押し破ってしまう板額(はんがく)御前という女性が登場する。
大磯の虎【おおいそのとら】
大磯の廓の太夫。工藤の宴席に招かれたが、実は十郎と恋仲にあり、朝比奈や化粧坂少将とともに工藤に曽我兄弟との対面を願い出る。一座の中心の女方である「立女形(たておやま)」が演じる。
化粧坂少将【けわいざかのしょうしょう】
虎と同じ大磯の太夫で、こちらは五郎と恋仲。舞踊『雨の五郎』で五郎が取り出す手紙は、少将からの恋文。「若女形(わかおやま)」という、一座の花形である女方によって演じられる。演出によってはもう一人、喜瀬川亀鶴【きせがわきかく】という太夫が出ることもある。
近江小藤太成家【おうみのことうたなりいえ】
工藤の側近の家来だが、実はお家乗っ取りを企んでおり、「曽我の石段」ではそれを八幡に見抜かれたことから二人で激しく争っている。「敵役(かたきやく)」の役柄。
八幡三郎行氏【やわたのさぶろうゆきうじ】
工藤の側近の家来。工藤に忠実で、前段では近江と激しく切り結ぶ。基本的な「立役(たちやく)」の役柄。演出によっては秦野四郎というもう一人の家来が出る。
梶原平三景時【かじわらへいぞうかげとき】
源頼朝の信頼厚い大名の一人。工藤の権勢にあやかって利を得るため祝いの席にやって来た。息子の平次景高と並んで似たような扮装で登場するため、通称「親梶原(おやかじわら)」と呼ばれる。悪人方の中心人物として登場する「叔父敵(おじがたき)」の役柄。
梶原平次景高【かじわらへいじかげたか】
平三景時の次男で、父と連れ立って祝いの席にやって来る。こちらは「子梶原(こかじわら)」と呼ばれる。小賢しい悪役「端敵(はがたき)」の役柄。
鬼王新左衛門【おにおうしんざえもん】
曽我家の家来。「対面」では登場はわずかだが、前段「鬼王貧家」の場では主である曽我兄弟のために金銭的に苦心しているところが描かれている。兄弟が探す名刀「友切丸(ともきりまる)」の行方を探し当て、それを手に入れるため妹を身売りさせるという忠誠心を見せる。さまざまに考えをめぐらせる「実事(じつごと)」の役柄。
河津三郎祐泰【かわづのさぶろうすけやす】
この場ではすでに亡くなっている人物。曽我兄弟の実の父。伊豆の豪族・伊東祐親(すけちか)の長男。父と姓が異なるのは、父が姓を譲って改姓したため。俣野五郎との相撲の勝負に、現在も相撲の決まり手のひとつである「河津掛け(かわづがけ)」を繰り出して勝った。その遺恨が原因で工藤の配下に暗殺されたとも言われる。
満江御前【まんこうごぜん】
この場には登場しない、曽我兄弟の実の母。河津三郎亡き後、伊東祐親のすすめで曽我祐信と再婚した。河津三郎との間にもう一人男子をもうけたが、この子は出家したため仇討には加わっていない。