新皿屋舗月雨暈~魚屋宗五郎 シンサラヤシキツキノアマガサ~サカナヤソウゴロウ

実直一途の魚屋宗五郎。妹が非道な手討ちにあったと知り、
酒をあおって殿様のもとへ。

祭囃子の響く芝の下町。魚屋宗五郎は妹が無実の罪で手討ちになったと知り、断(た)っていた酒を呑んで酒乱の姿に。そして駆け込んで行く先は、妹を殺した殿様の屋敷。「皿屋敷」の趣向を盛り込んだお家騒動を背景に、描かれるのは町っ子の心意気。

あらすじ

執筆者 / 金田栄一

お蔦は殿様の手に掛かって非業の最期

魚屋宗五郎の器量よしの妹・お蔦は旗本の磯部主計之助(かずえのすけ)の屋敷へ妾奉公に上がりましたが、岩上典蔵という侍がお蔦に横恋慕していることに加え、典蔵たちがお家横領をたくらむ密談も聞いてしまいました。暗がりの中で典蔵がお蔦に言い寄るところを浦戸紋三郎が救いますが、典蔵は逆にお蔦と紋三郎が不義密通だと言い立て、お蔦は怒った磯部の殿様・主計之助に惨殺されてしまいます。

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酒に溺れた宗五郎が、飛んで行く先は殿の屋敷

妹の死で悲しみに暮れる宗五郎ですが、きっとこれには相応の訳がある事だろうと自分に言い聞かせています。お屋敷から拝領したお金で一家は借金苦から抜け出せたのでもありました。そこへお蔦の召使いであったおなぎが酒を届け弔問にやってきましたが、真相を聞いてみると何の罪もないお蔦が、聞くに堪えない無残な死に方をしたと知れ、居ても立っても居られない宗五郎は酒に手を伸ばします。普段から酒を呑むと乱れるため懸命に断っている酒ですがこの時ばかりはと呑み出し、その勢いは止まらず、しこたま酔いが回った宗五郎は磯部の屋敷へと殴り込んでゆきます。

【左】魚屋宗五郎(尾上菊五郎) 平成26年5月歌舞伎座
【中央1】磯部召使おなぎ(尾上菊之助) 平成20年10月歌舞伎座
【中央2】[左から]小奴三吉(坂東亀寿)、魚屋宗五郎(尾上松緑)、宗五郎女房おはま(中村芝雀)、宗五郎父太兵衛(片岡市蔵) 平成22年5月新橋演舞場
【右】魚屋宗五郎(尾上菊五郎) 平成23年11月新橋演舞場
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屋敷で命拾いをした宗五郎

思いきり酔っぱらって屋敷へやってきた宗五郎の後を女房のおはまが懸命に追ってきました。あまりの無礼さに斬られてしまうところでしたが家老の浦戸十左衛門に救われ、宗五郎は「呑んで言うのじゃござりませんが」と悔しい思いを切々と訴えたあげくに、眠りこんでしまいます。目が覚めたところは屋敷の庭先、正気に戻った宗五郎は何があったのか見当が付きません。そこへ磯部主計之助が現れ、短慮からお蔦を殺めたことを深く詫び、弔意の金も与えます。そして典蔵の悪事も暴かれ、その場を逃れた典蔵もやがては捕らわれることとなります。

【左】[左から]宗五郎女房おはま(中村時蔵)、魚屋宗五郎(中村勘三郎)、浦戸十左衛門(片岡我當) 平成19年4月歌舞伎座
【右】[左から]宗五郎女房おはま(中村時蔵)、魚屋宗五郎(尾上菊五郎)、浦戸十左衛門(市川左團次)、磯部主計之助(坂東三津五郎) 平成23年11月新橋演舞場
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