江戸時代の歌舞伎の興行は、現在の大相撲と同じく、早朝から夕方まででしたから、照明は客席上方の窓から入る外光が基本でした。現代の劇場における歌舞伎の照明は基本的に「ベタ明かり」で、舞台上に明かりの濃淡が無く、一見単純ですが、登場人物がどこに動いても舞台上に影が出ないという照明です。この照明は、日本古来の絵巻物から浮世絵に至るまで、人物に影(陰影)をつけないという伝統にそったものですが、照明の手法としては簡単なようで難しい歌舞伎の極意のひとつです。また蝋燭を使った「面明かり」(差し出しともいう)や、幻想的な「瑠璃燈(るりとう)」などの古風な演出も、明かりによってその効果を上げています。
歌舞伎において音による効果といえば開幕・閉幕を告げる「柝」、立ち廻りや動作にメリハリをつける「ツケ」などがおなじみですが、鳥の声や赤子の泣き声、蛙の声、雷や波の音などの擬音も使われます。鶏や鶯、ホトトギスなどの声は竹笛で、蛙は赤貝をすりあわせる、雷は雷車、波の音は竹籠を油紙で包んで大豆や小豆を入れた浪籠などを使います。また音源やスピーカーを使った電気的な効果音も時には使われます。(金田栄一)