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かみこ 紙子・紙衣[習俗]

和紙(多くは手紙)を貼り合わせてつくられた衣類を紙子という。紙衣とも書く。古くから寺院や武士の防寒用などに用いられ、また貧しくて布の着物をきられない人にとって欠かせない代替品であった。しかし元禄期(1688~1704)には富裕な町人や茶人にも愛用され、廓通いの通人たちが高価な材料で仕立てた贅沢な紙子もあったという。歌舞伎では主に貧しさや、零落した身の上を表現するのに用いる。上方歌舞伎では金持ちの息子が放蕩のはて一文無しとなったやつれ果てた姿を表わす。入れ上げた傾城からきた手紙を貼り合わせた紙子を着て出るのが『廓文章』の主人公藤屋伊左衛門。通常は紙子の衣裳も絹地で仕立てるが、四代目坂田藤十郎は『夕霧阿波鳴門』や『夕霧名残の正月』の伊左衛門で本物の和紙で作った紙子を着て舞台を勤めたこともある。『袖萩祭文』では、親に背いて敵方の男に走った袖萩が息子の死に目を泣きつぶして盲目となり、雪の降るなか幼い娘に手を引かれて親の家までたどり着く。しかし家に入れず庭木戸の外で三味線をひきながら祭文を唄う時、紙子姿があわれさを強調する。(小宮暁子)

歌舞伎の衣裳>衣裳の柄>紙衣[衣裳] もご参照ください。

【写真】
『嫗山姥』紙衣を着た荻野屋八重桐(中村時蔵) 平成20年11月歌舞伎座
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